息をするように恋をする
 智也が寒そうなのは、雨が降っていつもより気温が下がっているせいもあるけれど、毛布のその下が一糸纏わぬ裸体のせいだ。
 と、そんな智也を観察するあたしも毛布の下は一糸纏わぬ裸体で。つまり、早い話があたしと智也は昨夜、通算3度目のセックスをしたのだ。
 煩わしい、嘘をつかなければならないセックス。
 あたし達の出逢いは至ってシンプルだった。友達のユキの紹介で。ユキは隣に座る智也の腕を、あたしの前で恥ずかしげもなく握って、「あたしの彼氏」と言った…。 
 なんて言うと、ユキと智也とあたしはドロドロとした三角関係、愛憎劇真っ只中と思わせそうだけど。勿論、そんなことはない。ユキと智也が付き合っていたのは10年前で、ユキは今や別の人と結婚して一児の母になっている。
 2人は至って円満に別れて、至って普通にその後も友達を続けた。だからこそ、あたし達も友達でいられるのだ。
 セックスフレンド。
 カラオケに行って歌いたいとき、友達を誘ってカラオケに行く。呑みたいとき、友達を誘って呑みに行く。ライブに行きたいとき、趣味の合う友達を誘ってライブに行く。
 あたしにとって、これはそれと同じ。
 セックスをしたいときは、友達を誘ってセックスをする。 
 もちろん、どんな場所に行くにも、どんなことをするにも友達は選ぶ。セックスも同じ。
 どんな友達ともするわけじゃない。ちゃんとあたしなりに、吟味して選んで智也にした。
 智也のセックスの上手さはユキの太鼓判付きだったし、長い付き合いだから変に拗れたり騙されたり、面倒がなくていい。
 何より、あたし達は凄く気があった。
 誰かと付き合って成立する責任とか、週末を相手に費やさなければならない義務感とか、相手を想いやったり気遣ったり。
 そういうことって面倒だよね、という点で。
 智也はユキと付き合っているときもそうだったけど、一人が好きだった。自分が起こす何らかの出来事は、全部自分の意志で自分の自由でやりたい、そういう人だった。
 みんなで集まった呑み会で、気づけば一人だけ先に抜けていなくなっていることもあったし、急にフラリと海外に出掛けて二~三ヶ月帰ってこないこともあった。
 出掛ける約束をしても、当日になってやっぱり行かない、なんてこともユキからよく愚痴を聞いていた。
 そんなだから、智也は誰かと付き合っても長く続かなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
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