身代わり王子にご用心
「このお店は知り合いがやっているので、レシピを教えてもらいましょうか?」
桂木さんにされた提案は魅力的なものだけど、私は首を横に振っておいた。
「ありがとうございます。でも、レシピはお店にとって大切なものでしょうし。何とか創意工夫して再現してみます」
そうして再びお料理のことを考えれば、落ちた気分が上向いてきた。
「そうですか……やはり、あなたは今の売り場より相応しい場所がありそうです」
桂木さんが意外な話を出したから、私の意識も彼に向かう。見れば、微笑んだ彼はこうおっしゃいました。
「以前から考えてたんですが、あなたはとてもお料理が好きなようですから。食品売り場に移動されては? と考えてたんです。それも生鮮品の方へ。日々新しい食材が入ってくる場所ですよ。いかがですか?」