身代わり王子にご用心
1週間ぶりに帰ったマンションで私を迎えたのは、桂木さんひとりだった。
「お帰り。ずいぶんゆっくりだったね」
彼には珍しく皮肉を感じるのは、1週間も無断欠勤をしたからだろうな。
「ちょっ……ちょっと体調を悪くして。と、友達のお家にお世話になってたの。連絡しなくてごめんなさい」
気まずいままそれだけ言って自室に行こうとしたけど。足に力が入らなくてフラリとよろめいてしまった。
「危ない!」
咄嗟に桂木さんが腕を出して支えてくれなければ、倒れてしまっていたに違いない。
「あ……ありがとう」
ホッと息を吐いて後ろにいる桂木さんを肩越しに見ると……
なぜか、彼の視線は私の首の辺りに注がれている。
「……桂木さん? あの……もう大丈夫だから……離して」
「あいつ……なのか」
彼が、低く低く呟いた意味がわからずに。それでも彼の瞳に灯った剣呑な光に寒さを感じて離れようともがく。
「か、桂木さん! もう……っ!!」
床から、足が離れた。
彼にお腹を抱えられたまま、一番近くのリビングに連れ込まれる。
――それから、信じられないことが起きた。