身代わり王子にご用心
しばらく待ってみたけど、やっぱり反応がない。やや強めにノックしてもダメ。
今度は拳でドアをノックして同じセリフを繰り返したけど、物音一つしない。三度起こしてもダメな時は、そのまま部屋に入ってもいい――桂木さんに教えてもらった通りに、ドアを開いて室内に足を踏み入れた。
「高宮さん? 起きてますか」
全体的に黒と白のモノトーンで統一された高宮さんの部屋は、テーブルとベッドといくつかの棚くらいしか置いてないシンプルさだ。
一時の仮住いだから、物が少なくて当然かもしれないけど。彼がこの状況に文句や愚痴を言うのを聞いたことがない。桂木さんとは中学からの腐れ縁と言うし、仕方ないと割り切っているのかな?
なんて考えながら黒づくめのベッドに近づき、はたと気付いた。雑誌がいくつか床に散らばっていたのを。