身代わり王子にご用心



「はい、本当にいろいろとお世話になりまして。明日から仕事に戻ります」

「そうですか。それはよかった」


ダークグレーにホワイトのストライプが入ったスーツを着た彼は、ビジネスバッグをダイニングテーブルに置いてネクタイを緩める。


うわぁ、何だか心臓に悪い。スーツを着た男性がきっちり結んだネクタイを緩める仕草に萌える、ってどこかに書いてあったけど。こりゃあ確かに。


なんて奇妙な思考に走っている私の頭の中を知らず、桂木さんは冷蔵庫から作りおきのハーブティーを取り出しコップに注ぐ。


「ですが、水科さん。明日はまだ出なくていいですよ。店長命令でシフトを変えてありますから。それよりも……明日は必要な物を買いに行くのですが、水科さんにお付き合い願えますでしょうか?」


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