身代わり王子にご用心



……今日も、かぁ。


身体を慣らすために藤沢さんと鶏鍋を作ったのだけど、高宮さんは日付が変わっても帰って来なかった。


鶏鍋の鶏は骨付きの方がよい味が出て美味しい。ちゃんと出汁を取れば、余計な調味料を入れなくても食べられるんだよね。


(今日こそは食べて欲しかったのにな)


ダイニングで藤沢さんや桂木さんと一緒に食事をしながら、一つだけ空いた席を見て何となく寂しくなる。


「そうそう、未来。明日は水科さんと出掛けて来るよ」


私がぼんやりと見ていたからか、気まずさを断ちきるように桂木さんが話を切り出す。


それを聞いた藤沢さんは、「ああ」と得心したような顔で頷く。


「そういえば、もうすぐなんだっけ? わたしはもうカッツーに選んでもらったから、桃花さん。明日は何もかもカッツーに任せればいいよ~」


にこにこと邪気のない笑顔で仰いますが、藤沢さん。偽物だけど、あなた達は恋人同士じゃないの? という疑問が目に出てたからか、藤沢さんはカラカラ笑って私の背中を叩いた。


「大丈夫、わたしは別にカッツーとは本当の恋人じゃないから。デート楽しんできてね~」


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