【完】クールな君に胸キュン中!
ムカついて。ムカついて。
俺のせいで、関係のない折原奈乃があんな目にあったのに……。
そんな目にあわせた俺と……俺に好意を寄せるこの女に、イライラした。
――『桐谷くん!』
俺に笑いかける彼女の笑顔を思い出す。
それに引き換え、目の前にいる女の計算し尽くした笑顔にふっと嘲笑がこぼれた。
「? どうしたの、桐谷く……!」
これ以上、喋んな。
お前の声なんか、聞きたくもねぇよ。
俺は阿部の口を手のひらで押さえ、目をスッと細めた。
「バカっぽくて、何が悪い」
「えっ……?」
「要領悪くたって、お前なんかよりずっと可愛いよ、あいつは」
「……!!」
それだけ言い残して、俺は振り返ることもなく、すぐにその場を後にした。