庭師とお姫様 (naturally番外編)
ただ自分の手をしっかりと握り締め、時折笑いかけてくれる彼の背中だけを信じて足を進めていく。



段々と遠退いていく城にも国にも未練なんて感じず、不思議と気持ちは穏やかに凪いでいた。



彼が生まれ育った大地を踏む喜びで、むしろミリザ姫の胸はどんどんと高鳴っていく。



こうして二人が手を取り合い、無事にマーセル国に入国した時だった。



「姫。マーセルはクロチェと違っておおらかで自由な国です。俺が貴女の後ろ楯になります。だから、貴女の思うように自由に生きてください」



ずっと引いていた手を離し、振り返ったミリザ姫に告げられた言葉で姫の頭の中は真っ白になる。



後ろ楯や自由という言葉に、期待で高鳴っていた姫の胸は潰れてしまいそうなくらい苦しくなっていく。



「……やはり私が居ては迷惑ですか?」



自分の意思とはいえ、クロチェから亡命した自分のような存在が居ては、彼の迷惑になってしまうかもしれない。



必死に頭を納得させようとするものの、瞳の奥から熱いものが込み上げて、手足が小さく震え始めた。



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