透明人間
 そして私は一つの案を講じた。あのデパートに行くことだ。もしかしたら私も警察も見落とした、何か手がかりがあるかもしれない。この世にいる金色のアリを探し出すような話だと思うが、その確率にかけてみようと思った。何もしないで蝕まれるなら、最後まであきらめない気持ちでいたほうがいいからだ。

 しかしいつまでもそんなことはできない。昇だって自分のことでいっぱいだ。つまり仕送りなんて期待できない。私も働かなければ。そこでまたひらめいた。誰でも思いつきそうだが、デパートで働けばいいと思った。

 私はこれを機に新たな自分のきっかけにできそうな気がした。そして誠也も見つかりそうな気がした。

 誠也がいなくなって一ヵ月半のことであった。


「あ、テレビで見たことある人だー」

「ねえねえ、誠也君、どうなの?」

「あなた、こんなところにいて、大丈夫なの?」

 あーあ、やっぱり働きに出るんじゃなかった。

 こんなことになるのは目に見えていたはずなのだが、いざとなると、やはりため息をついてしまう。嫌な空気にいるのは辛いが、今が辛抱どころだと思うことで私の中にある柱が倒れないでいてくれる。ある意味自分に支えてもらっているという変なことなのだが、私はそれでよしとしている。まるでもう一人の私が私の中にいるようであった。

 しかし二週間の日を過ごすと、さすがにヤジはなくなった。どちらかというと同情の念が言葉から変わってできたものが今の状態だと思える。半ば同情のような目で見られるのが逆に首を絞めているのも気付かずに、彼らは眉間にしわを寄せるなり一瞬こちらを見るだけで何もしようとはしない。私は今までの苦痛の蓄積をさらに増すきっかけを、さらに作ってしまったような気がする。

 そんな時、誠也のためだ、と思うだけでそんなことを忘れてしまう。最近分かったことは、私が弱いということ。誰かに依存していないと生きていけない、そんな人間だ。

 私は自身に自信がもてないでいても、扉の前で一呼吸をし、私の担当売り場へと足を進めるのであった。
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