透明人間
 食品売り場に着き、音のしたほうへ向かった。飲み物置き場と踏んだ私たちはそこへ急行したものの、そこには何もなかった。

 そこで霧生は一つの提案を出した。

「大島さん、別れて捜索しませんか」

 私は驚いた顔をして霧生を見た。

「では、私は右へ行くので、大島さんは左へお願いします。では、また」

「あ…」

 霧生は懐中電灯を持って、足早に行ってしまった。まるでスキップをしているようであった。

 私はそこに取り残された。周りは暗く、もちろん誰もいない。しかも懐中電灯は一つしかないのに、霧生はそれを持っていってしまった。本人はそのことを知っているのか知らないのか。まったく笑い事ではない。私にとっては一大事だ。

 どうすることもなく、私はしばらく近くにつかめるものを握って、姿勢を低くしていた。しかしそれもつかの間で、誠也のことを考えると、確かに一歩を踏み出した。

 左へ曲がり、一つ一つの列を通り過ぎる度に、辺りを見回しながらゆっくりと前へ進んだ。遠くのほうで足音がするが、それはもう誰のものなのかは分かっているので、その音だけに気に留めれば、他の音はまったくというほど怖く感じられなくなっていた。

 そしてある列を覗いた時、私の目に異様な光景が映った。

 それはポテチの袋が宙を舞い、そこからポテチが出されたと思うと、まるで人が食べているかのように、音も出さずに消えていった。

 それを凝視していた私は、悲鳴なんかより驚愕のほうがはるかに大きかった。そこですっかり腰を抜かしてしまった私はその場に座り込んでしまった。

 そしてポテチの袋はそこに落ちると、私の声を駆けつけた霧生がやってきた。

「どうしたの。何か見たの」

 もう年の差なんて関係がない。すっかり夢中だ。

 すると霧生の後ろから警備員もやってきた。まだ中年の少しおなかの出た男性であった。

「どうしたんですか」
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