透明人間
 私はそのことに気付かず、ポテチの袋を指差していた。

 その指先を見た霧生と警備員は、今度はそこへ歩み寄った。

「ははーん、まだこの辺にいるかも。大島さん、もしかしたらまた、ここに来るかもしれないから、ここにいてください」

 そう言い残すと、霧生はそそくさと行ってしまった。その後を警備員がついていった。私は一人になった。

 しかし私は霧生の言うとおり、その場にいた。腰を抜かしてそこにいるのが現実なのだが。

 すると肩を軽くたたかれたような気がして私は振り向いた。しかしそこには誰もいなかった。

 私はしばらく何か出るまでじっと通路を見つめていた。何を期待していたのか、よく分からない。しかし何か出るまで止めようという気もしなかった。ただ、何かを望んで待っていたかっただけのことかもしれない。

 しかし期待通り、次の瞬間、再び不可思議なことが起こった。

 それは棚からアメの袋が一袋取られ、開けられたと思うと、その場に一つのアメを落とした。そして少し離れたところにまた一つ、また一つと落とされた。

 さすがにまた驚いてしまったが、今度は悲鳴を上げなかった。なぜだか知らないが、やけに落ち着いていた。私に危害を加えないと分かったから。私自身がその行動に何だか分からない共感を得たから。両方の、また、他のことも考えられるだろう。

 そのままアメを落とし続ける得体の知れないものは、何だか私を誘っているようで、私に何か伝えたいというものも心に強く感じる。私はそのアメ玉の先に何があるのか気になった。私に伝えたいことはなんだろうか。

 私はその後をついていくことにした。立つ時、私の体は素直であった。

 通路を抜け、アメが落ちてあるとおりに歩いた。まだ前のほうにぽつぽつと落ちている。通路からレジへ、レジからまた通路へ、今度は止まっているエスカレーターまで上ることになった。そこからは遠くのほうで光がゆらゆらと動いているのが見えた。暗くて足元がよく見えない。その光が欲しいぐらいだ。私は時々転びそうになりながらも、最後まで上りきった。
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