透明人間
そしてアメは洋服売り場の中に入っていった。あの洋服売り場だ。誠也がいなくなった、あの洋服売り場だ。私はそこに入るのを少し躊躇しながらも、ゆっくりと歩を進めた。アメはあの試着コーナーの前まで続いて、もうそれ以上はなかった。
そして私は胸の鼓動を抑えながら、その試着コーナーのカーテンを開けた。
悲鳴であった。私はいつの間にか、また叫んでいた。そして次に出た言葉に私は驚いた。
「誠也…誠也…」
誠也は立っていた。そこには誰もいない。どちらも正解。誠也は鏡の向こうにいたのだ。
「大島さん。どこ…」
遠くの方で霧生が叫んでいたが、私は気付かなかった。
「誠也…誠也…」
私は鏡にへばりつきながら、その時何かを押しつぶしているような気もしたが、涙を勢いよく流していた。まるで涙腺が切れたかのように、面白いように出てくる。心がはちきれそうであった。胸が爆発しそうであった。その裏には何も感じられなかった。
私は鏡をたたいて割ろうとしたが、私の肩をたたく影に気付いた。私は鏡を見直した。
誠也が二人、そこにいたのだ。なぜ二人いるのか、私は分からない。
二人の誠也のうち一人が白い息を鏡に吹きつけ、文字を書き始めた。
ぼくは だいじょうぶだよ
すべての文字は逆であったが、それは私への会話するための手段であることに気が付いた。
私も息を鏡に吹き付け、文字を書き始める。
なんでそっちにいるの その子は
文字を書く途中で気が付いた。誠也は鏡の世界にいる。こちらの世界にはいない。つまり鏡の世界にはこっちの世界の誠也と鏡の世界の誠也と二人いる。なぜだか分からないが誠也はこちらの世界では透明人間として生きているらしい。よくよく見てみると、一人の誠也のトレーナーにポテチのカスがついている。
そして私は胸の鼓動を抑えながら、その試着コーナーのカーテンを開けた。
悲鳴であった。私はいつの間にか、また叫んでいた。そして次に出た言葉に私は驚いた。
「誠也…誠也…」
誠也は立っていた。そこには誰もいない。どちらも正解。誠也は鏡の向こうにいたのだ。
「大島さん。どこ…」
遠くの方で霧生が叫んでいたが、私は気付かなかった。
「誠也…誠也…」
私は鏡にへばりつきながら、その時何かを押しつぶしているような気もしたが、涙を勢いよく流していた。まるで涙腺が切れたかのように、面白いように出てくる。心がはちきれそうであった。胸が爆発しそうであった。その裏には何も感じられなかった。
私は鏡をたたいて割ろうとしたが、私の肩をたたく影に気付いた。私は鏡を見直した。
誠也が二人、そこにいたのだ。なぜ二人いるのか、私は分からない。
二人の誠也のうち一人が白い息を鏡に吹きつけ、文字を書き始めた。
ぼくは だいじょうぶだよ
すべての文字は逆であったが、それは私への会話するための手段であることに気が付いた。
私も息を鏡に吹き付け、文字を書き始める。
なんでそっちにいるの その子は
文字を書く途中で気が付いた。誠也は鏡の世界にいる。こちらの世界にはいない。つまり鏡の世界にはこっちの世界の誠也と鏡の世界の誠也と二人いる。なぜだか分からないが誠也はこちらの世界では透明人間として生きているらしい。よくよく見てみると、一人の誠也のトレーナーにポテチのカスがついている。