夢見るきみへ、愛を込めて。

「まだ、今も……人身事故の報道が見聞きできないんだね」


だって、見たくも聞きたくもないんだもの。

思い出すからじゃない。錆びたスコップがぐさりと突き刺さって、肺腑がえぐられるような気になる。すごく痛いの。痛くてたまらないの。いっそ死んでしまいたくなるほどに。


「何度も言っただろう。灯のせいじゃ、」

「じゃあどうして会いに来たの!?」


分かってるじゃない。会いに来なくたって、誰もが分かりきってることじゃない。


いっくんは、もういない。


3年前、大学4年生だった彼は事故にあったでしょう?

バイクは危ないよ、って。心配だよ、気をつけて、って。乗らないで、って。何度も何度も言ったのに。泣いてすがったのに、聞かなかったじゃない。

ツーリングをしに山道を走りに行って、スリップしてバイクから投げ出されて……血がいっぱい出たでしょう?

そんなこと、嫌になるほど話したのに。夢で見たって。絶対に事故は起こるって訴えたのに。


あの時ほど、自分の輪郭がぼやけたことはない。

何度も私のせいじゃないって言いながら、今度は"私"に、あなたの息子はもう存在しませんって言わせるの?

私はそのためにいるの?


いっくんがいなくなってから、哀しくてどうしようもなくて。罪悪感に押し潰されてしまいそうで。心細さにたまらなくなって。それでもなんとか3年間、やり過ごしてきたんだよ。


それなのに。


「娘を探してほしい」


予想だにしなかった探し人に、ガツンと後頭部を殴られたようだった。


「行方不明になって、5ヵ月になる」
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