夢見るきみへ、愛を込めて。

振り返った先で、司さんは元から垂れた眉をいっそう下げる。


「灯は会ったことがなかったな。ひとり旅だと言って、よく遠出する子だったんだ。それが突然、帰ってこなくなって。警察や興信所にも協力してもらったが、見つからない」


そんなことはどうでもいい。私が聞いているのは、


「頼む、灯。どんな些細なことでもいい」

「何を言ってるの?」


その胸ポケットから出した写真を見せて、次は名前と年齢でも教えてくれる気だろうか。


私の心境を汲めない様子の司さんに、大きなかさぶたを無理やり剥がされたような痛みを感じた。


「会いに来たのは……いっくんのことじゃ、ないの?」


いっくんのことで会いに来たんだと思って避けていた。だけど私がこうして話だけでも聞こうとしたのは、どれだけ痛みを伴おうと、いっくんを忘れたくないから。


それなのに、どうして。
司さんの娘なんて知らないよ。私の人生に、これっぽっちも関係ないじゃない。


「違うでしょ? 司さんが私に会いに来る理由は、たったひとつでしょ? 灯のせいじゃない、灯は悪くないって言いながら諦めきれなくて。私に頼るしかなくて。だけど何も変わらないから、息子を返せって思うんでしょう?」

「……思わないよ」

「思ってよ!」


いっくんがいなくなったのは、私のせいだって。私がちっぽけで、役立たずだったからだって。

そうやって、もっと、もっと、いっくんに逢いたいって思ってよ。もう一度だけでいいから、夢の中でいいから、逢いたいって。


「どうして司さんまで……いっくんのこと、忘れたみたいに言うの……」


今じゃ名前も出ない。話題になっても、代わりがいるってことばかり。
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