夢見るきみへ、愛を込めて。
「あたし、さっき、無神経だったよね!?」
「……は?」
「パッとしないとか! 家族行事が嫌みたいなこと言ったし、彼氏がいたらとか……なんか、感じ悪かったかもっていうか、その」
どんどん申し訳なさそうな顔になっていく翠に、疑問符ばかり頭に浮かぶ。
「灯、調子悪そうなのに、愚痴っちゃって」
「え? や、薬飲んだし……それもただの寝不足で、謝るようなことじゃ」
引っかかっているものを取り除こうとしても、翠の顔は暗いまま。
無神経だったって、何を気にしているんだろう。感じ悪いとか、思ってないのに。もしかしたら私の受け答えが気怠げだったから、気を揉ませてしまったのかもしれない。
「でも、やっぱり……ごめん」
気にしすぎだよ、と苦笑しかけた私は目を合わせた翠が抱える気持ちを見逃していた。
「灯にとって冬休みは……」
最後まで言い切れず、俯いてしまった翠にようやく合点がいった。
「ああ、なんだ。命日のこと言ってたんだね」
私の冬休みと言えばそれしかない。加えて翠は、家族や彼氏の話題にフォローを入れさせてしまったことが引っかかっていたんだろう。思い返せば私の言い方も、翠しか充実していないと捉えられてもしょうがないものだった。
「それと寝不足は、少しも関係ないよ」
当人が微笑んでも心からは信じてもらえないだろう。雪の降る季節、私が大事な人たちを失ったことは事実だから。
「最近ちょっとね、夢見が悪くて」
これじゃあまた心配させてしまうかなと思いながらも、翠の罪悪感を取り除きたかった。止まっていた足を動かすと翠もついてきて、遠慮がちに声をかけてくる。
「寝る前にホットミルクかハーブティー飲むといいよ」
「あー。コーヒーじゃダメかなあ」
「え。逆に目、覚めない? まさか飲んでる? 寝る前に?」
んふふと笑って誤魔化せば、「ちょっとー!」と背中を叩かれる。
「やめなよ! 睡眠の質が下がりそう! ていうか胃に悪そう!」
昔から胃痛持ちだった私の通院歴を知っている翠は、このままいくとまた胃カメラ飲まされるよと脅しまでしてきたあと、携帯を取り出した。