夢見るきみへ、愛を込めて。

「もー……今度ハーブティー持ってくるからねっ」


ちらっと見えた翠の携帯画面には、リマインダーが表示されていた。隠す気もないようで覗き込むと、『灯に飲ませるハーブティー』と打ち込まれていて、重要度を示すエクスクラメーションマークは3つになっている。

他にも『灯のご飯』という過去のリマインダーも見えてしまい、まるでペットみたいだと笑いが込み上げた。

「ふ、あははっ」

「なんで笑うの! 大事なことでしょー!?」

心配症な友達。私の心だけじゃなく、身体まで気遣ってくれる。優しくて、優しすぎて、私に返せるものがあるのかって申し訳なくなる。


「ありがとうね、翠」


詳しいことを聞かずにいてくれることも、自分なりに解釈して心配してくれるところも、有り難いけれど。

「いいってことよ!」

そうして笑い返してくれる翠を、私はちゃんと大事にできているのかな。不安になるくらいならいっそ、何もかも話してしまったほうがいいのかもしれない。

考えては思いとどまることを、数年繰り返している。

本当の私を理解してくれるのは、いっくんしかいないと。意識しなくても心臓が同じ場所で脈打っているように、私の根底にはいっくんがいる。


……そんな当たり前のことを、こうして確認する頻度が増えた。


『ハルは僕だけのもの』


最近の私は、おかしい。いっくんの言葉を反芻しても視界がぐらつくようで、寝付けずにいる。

お父さんと電話で話してからのような気もするし、彼と事故の話をしてからのような気もする。もしかしたら命日が近いせいなのかもしれないけれど、そんなことで調子を崩すくらいなら、私はとっくに壊れているか死んでいる。

この胸のざわつきは、変わろうとしている兆候じゃない。

きっと、不安なんだ。過去の夢でもただの夢でもいいのに、なかなか逢いに出てきてくれないから。

いっくんと過ごした日々が、幻のように思えてしまうんだ。
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