【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
来てくれて嬉しいよ、とか。俺も会いたかった、とか。
気の利いた事を言えればいいのに、ドギマギしてしまって何も言えない。
「……退院、おめでとう」
「おう、ありがと」
これ私と両親からのお見舞いね、と菓子折りを渡される。
ふと、さっきから微妙な違和感を覚えて、──その正体に、気付く。
……沢森の敬語が、無くなってるんだ。
沢森が敬語の頃はどうしても距離を感じていたけど、その距離が今、ぐっと縮まった気がする。
……それにしても、どういう心境の変化なのか。
沢森には土屋がいるから、期待するだけ無駄だってわかってるのに、期待してしまいそうになる。
あわよくばなんて、浅ましい考えをしてしまう。
「……今日はね、木村君に伝えたい事があって」
──ほら。
そんな、微かに潤んだ瞳で。ほんのり色付いた頬でそんなセリフ、言われたら。
どうしようもなく胸が高鳴るから、やめて欲しい。