シーソーゲーム
「…っていうか、あんたも座りなよ」

 私はベンチをたたき、早く座るよう急かした。

 夏になると、ここから満天の星が望める。まるでプラネタリウムをタダで観賞しているようなのだ。星のきらめきが一つずつ、克明に見える。昔、リョウとここに来て、星と星を結んで勝手に星座を作ったものだ。

 それに、花火も見える。毎年行われるイベントで、その時はミズキも一緒に欠かさずここに来て、一緒に観ている。その帰りに近くの神社で屋台の出店もしているので、そこにも出向く。

「ここ来たのも久しぶりだね」

「そうだな。去年の夏、ここに花火を見に来たっきりだな。花火大会って、祭りの帰りだよな」

「そうそう…今年も祭りの帰りに、見に来ようよ。ね」

「まあ、多分、空いてると思うが」

「じゃ、約束…しなさい」

「できたらな」

「何で?できないの?」

「まあまあ。祖父の忌引きとか、そんなかんなで来れない日もあるだろ。まだそんな予定はないが、突然の不慮の事故的の想定だよ」

「じゃ、それ以外ならいいの?」

「ああ。行けるなら、ちゃんとメール送るよ。というより、メールで送っから」

「それにしても、あんた、想像に行き過ぎ」

 まったく、と一旦安心した私は、また夕陽を眺めた。さっきより低い位置にあったが、美しさはいまだ健在だ。

「もうそろそろ暗くなっから、帰っか」

「そうね。でも、もうちょっとここにいさせて…」

 私は自然にリョウの肩に寄りかかった。別に緊張やドキドキ感などはなかった。本当にごく自然に、流れでやってしまった。我に気付いても、私は寄りかかることをやめなかった。肩はごつごつとしていたが、ぬくもりがあった。

 リョウも拒否しようとはしておらず、逆に受け入れているような感じだった。しかしそれは幼馴染で親友の壁を、まだ越えるものではなかった。

 もうちょっと。もうちょっと…

 私の気持ちは駆動する。
< 10 / 214 >

この作品をシェア

pagetop