シーソーゲーム
「やめればいいのにな。聞いてるだけで腹が立つ」

 集団のリーダー格の女子が立ち、周りの女子を引っ張るように言った。その集団と入れ違いに、リョウとミズキが教室に入ってきた。

「トイレ行こ」

 集団はクラスから消えた。

 もうクラスは岸の味方だった。歓声と歓喜。岸に温かい言葉が送られる。岸の勇気に見惚れられる。

「すごいな、お前。見直したぜ」

「あーすっきりした」

 岸はその後、何か成城に話し、席に戻ってきた。この席にも、温かく差し伸べる手があった。リョウとミズキはクラスの雰囲気だけを感じてすべてを覚ったようだ。

「なるほど…岸が…」

 岸が戻って来て席に座ると、と、リョウは岸の頭をなでた。まだ私が一度もされたことがないことだ。ずるい。岸が憎く思える。

 見ていた私。止めた岸。その差に、私は大きな距離を感じた。それは後に、リョウとの距離となるなんて、まさかの展開ではあるが、夢にも出てこないだろう。しかしこれは現実となってきているのであった。


 岸はすっかり成城と仲良くなっていた。いつも楽しそうに話している。今だって、話題も発展していなさそうなのだが、今まで無表情だった成城の顔も緩みつつあった。

「すごいな…岸…」

 リョウがぼやく。

 私はそれが嫌だった。リョウの頭の中が、ルイの毒に侵されていくのをみすみす見ているなんて、絶対嫌だ。

「そうだ。今年も行こうよ、キャンプ。もしかしたら来年はいけなくなるかもだし」

「そうか…もう夏休みか。早いな」

 私たちはクラスの窓際、後ろの席の一角で、いつの間にかたまり場となっていた。前から席も近かったし、席替えをしても大して移動はしていない。むしろしていないと言った方が正しいだろう。この一角に固まって、陣取っていた。岸は成城の席の前になった。私の周りに、リョウ、ミズキ、ミズがいる。

 ミズは今年、たまたま一緒のクラスになった。中学校では一度も同じクラスになったことがなかった。ただ、見かけたことがあるだけだった。そして近くの席になってから、急に仲良しになった。相手の方から、積極的にだ。

 ルイもそうだった。転校してきて、近くの席になったから仲良くなっただけのことだ。以前からの交流はない。
< 12 / 214 >

この作品をシェア

pagetop