シーソーゲーム
「ほら、行くぞ」

 三人はすでに改札口前まで移動していた。

 私は空をぼんやりと眺めていた。あまりの空気の透明度と健やかさに感服し、空はパレットから水色のインクがこぼれたようにきれいに広がっていた。雲はどの空よりも生き生きとしているようで、ウサギが飛び交っているようであった。

「ほら、行くぞ」

 今度はミズキから声がかかる。

 改札を通り、駅の前のいかにも古びてバスでも来ないのではないかというバス停の前でバスを待った。ベンチは色あせていて、プラスチックが折れて地面に落ちていた。四人は座れるものの、少し窮屈だ。こんな暑い日にくっつくなんて。だがそれはいいことかもしれない。

 だがリョウは言う。

「座れよ」

 そう言われた私とミズは素直に座った。

 しばらくして、バスに乗り込み、強いクーラーが何とも天国に感じられた。非財は少しだけ感じられるが、一番後ろの席に座ることにした。

 私は当然のようにリョウの隣を独占して座ろうとしたが、リョウの隣にミズが座った。

 あれっ。何で。

 意味が分からず、私は躊躇した。

 バスは動き出した。

「危ないぞ。ほら、座れよ」

 そう言われて、ミズキの隣に座った。ミズキはその『一番後ろの席のひとつ前の席に座っていた。

 私はしぶしぶとした顔で座りながら、その席越しからミズをにらんだ。だがミズの表情は穏やかで、この上なく嬉しく、喜びに満ちていた。

「アズサ、どうした」

 ミズキが心配そうに聞く。なかなか前を向かない私を不審に思ったのだろう。

「いや、なんでもない」

 ミズキにも分かったのだろう。私が不機嫌そうな顔で座ったのだった。そして話しかけづらかったのだろう。ミズキは口を開くが声を出さずに途中でふさぐ。

 外は先ほどまで晴天以上の快晴で、雲なぞ一つもなかった。だが山付近の転校は変わりやすいらしく、雲は空を覆いだした。一斉に、戦火を巻き起こそうとしているようで、煙が立ち上って天井に留まった。

「嫌な空だな」

 ミズキは思いため息をついた。

「せっかく来たのにな」

 背後からリョウの声も漏れたように聞こえた。
< 17 / 214 >

この作品をシェア

pagetop