シーソーゲーム
「何言ってんだお前。俺はいつもお前のこと、女だと思ってるぞ。そうじゃないで、何でスカートはいて、リボンして、わざわざ胸膨らましてくる男子なんかいるんだよ」

 それはもっともだ。だが、それは私を窮地に追い込んでいた。

「それだけ?」

「え?それ以外、何が…」

 すると突如、林の影からミズが現れた。

「あ、いた。ねえ、リョウ君、ちょっと来て。味見でさ、どうかなって」

 リョウはこの状況をどうしようかと私を見たり水を見たり迷っている様子だった。

「行けばいいじゃない。私はもう少しここで拾って行くから。まずかったら絞殺ね」

「ああ、分かった。それも持ってってやるよ。じゃ、後は任せた」

 リョウは枯れ枝を持って、ミズとコテージのほうへ行った。

 私はリョウを見送った。木々をよけ、さらに奥へ奥へと行って、見えなくなると、私は我慢をやめた。

 私は女だと思われていない。飾りだけが女で、中身はただの幼馴染。そのことで無神経なリョウが傷つけた私の傷は、マキロンでも、ムヒでも、セメントでも埋められない。マリアナ海溝よりもずっと深い傷が、立った一言の言葉でできた。

 私は木に寄りかかり、ため息をついた。

 こんなことでいいのか。本当に。リョウを引き止められない自分が情けない。

 すぐに泣き止むことはできたが、その時は全部出し切りたかった。すぐに止まると思っていた。それがすべての体に蓄積する重みであって、出さないと垢になると思った。

 そよぐ風が涙をなでる。くすぐるようで、気持ちよかった。

 そして突風に変わると、私は吹っ切ることができた。

 私は枯れ木を持ってキャンプ場に戻ると、そこには一人ミズキがいた。

「おお、戻ったか」

「あれ、二人は?」

「え?波和さんはトイレだって言って行っちゃったけど…そういえば、ずいぶん長いな…あれ、リョウはどうした?」

 私は気付いた。腕の力が入らず、持っていた枝は真下にバラバラに落ちた。

 そして気付いた時には走り出していた。

「おい、どこ行くんだ」

「リョウを探してくる。ミズキはそのまま作ってて」

「ああ、おい…はぁ…」
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