シーソーゲーム
 私はもと来た道、といっても林の中で道という名の道はないが、木々の間をすり抜けていった。しかし行けども行けども目の前に現れるのは木ばかりで、私の心は飽きるよりも、不安が積もるばかりであった。

 空はいよいよ黒い雲が覆い、今にも土砂降りの雨が降りそうであった。それに混ざって本当の土砂も降らないか心配だ。

 そしてその心配はすぐに的中した。そのおかげで私は木の下から木の下へと、雨宿りをしながら進むことになった。なるべく雨に当たらない努力はむなしい。結局ぬれてしまうのだから、それだったらいち早く見つけるのを優先したほうがいい。だが人間の本能のようで、思うようにはやめられなかった。それが雨に当たらなくていいという時間で、安心して、今の心境と重なるようになっていた。

 雷が鳴り出した。それがきっかけで、雨も堰を切ったようにさらに強くなった。

 あれから何分経ったか。それよりも早く見つけたいという一心だった。

 ついには林を突っ切って、小さな空いた土地に行き着いた。短草しか生えていない、何もないところだった。そして小さな洞穴を見つけた。小さい丘の崖の下にそれはあった。

 私はそこに向かった。雨宿りもしたかったし、しかし一番はそこにいるという確信があった。特に根拠のないから元気と一緒で、いつもの勘であった。

 中は暗かった。寒い空気が肌に感じる。その空気は人のにおいを乗せてきた。

 目を凝らすと見えるようで見えない、うっすらとゆらゆらと見える人影らしいもの。

 雷が光って、それが誰だか分かった。

「…リョウ」

 雷が私の背後に落ちた。それはある程度離れていたものの、音と光すさまじかった。

 ミズは壁に寄りかかって寝ているリョウのそばにいた。私の声ではっとリョウの顔から遠ざかり、すぐさまこちらを見た。

 私はリョウに近づいた。

「どうしたの?」

「いや…その…」

「あんたには聞いてない」

 私はしゃがみ、リョウの顔をさすった。

 リョウの顔には泥が塗られていた。そして気付いたようで、また、痛みに耐え忍んでいた。

「どうしたの、リョウ」

「…ああ、どうしたんだ、ここまで…ッ」

 リョウが足を抑えているので分かった。ただ足をくじいたようだ。
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