シーソーゲーム
 私は目つきでミズを退けさせ、そしてリョウの肩を持とうとした。

「立てる?」

「ちょっと…無理かもな…」

「脱ぐ?」

「いや。ちょっと、このまま放っといてくれ」

 今はもう、リョウの言った言葉を忘れている。目の前で苦しんでいるリョウを見てはいられない。二つの気持ちが一つに押し込められていた。

「でも、ここにいつまでもいるには…」

「そうだけどよ…お前、ずぶ濡れじゃないか。大丈夫か。これ、着ろ」

「いいよ、別に…」

「ほら、着ろ」

 リョウは上着を脱いでいた。

 私はそれをほぼ押し付けられた感じで受け取ったが、内心嬉しかった。

「悪いわね…立てる?ほら、私の肩につかまって」

「だから無理だって」

「後で無理するより今無理して休んだほうがいいって。ほら、さ」

 リョウは重かった。

 昔、といっても小学生の頃だが、リョウを持ち上げたことがある。その時はまだ、私のほうが力が強く、リョウを持ち上げるぐらい、たやすいものだった。だが今になって、リョウの成長が感じられる。それに、こんなに近くにいたのはいつ振りだろうか。電車の中での近さとは違う、妙な感じのものだ。

「あ…やんだ」

 私たちが洞穴から出ようとすると、それを見計らって雨はやんだ。そして雲は掃除機で吸われるように、すぐにきれいに一掃された。

「ほら、太陽も出てきた」

 機を見て出てきたように、太陽は笑っていた。

 私はリョウを担ぎながら、ゆっくり、キャンプ場へ戻った。自分の足が棒になっているのにも気付かずに、無我夢中でリョウをコテージまで運んでいった。疲れきって、顔もやつれ、まるで山姥のような顔になっているのにも気付かずに。

 その後ろからミズがついてくる。ひどく眉間にしわを寄せている。疲れた顔ではなく、不安な顔でもなく、嫌なものを見るような目でもなく、ただ今の状況を飲まないように気を使っていた。

 そして長い時間をかけて、やっとの思いでコテージの前まで着いた。そこで順序良く、コテージからミズキが出てきた。

「どうした、お前ら」
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