シーソーゲーム
 ミズキは驚いていた。もしそうでなければ、ミズキの人間性を疑う。ぼろぼろの三人を目前にして、しかもその内一人が足をやられて、なおかつこないのはおかしい。

「後は俺が…アズサは着替えて休めよ」

 ミズキにリョウを任せ、二人がコテージに入ると、次いで私もコテージに入った。

 一階の部屋で横になるリョウを見てから、私はロフト的存在の二階に上がった。そこは六畳ほどしかないが、寝転がれる。

 寝転がり、私は足を伸ばせるだけ伸ばした。そして鼻でリョウの上着をかいだ。少し汗臭かったが、昔からよく知っているリョウの匂いだそれを改めて知って、懐かしみながら何とか落ち着くことができた。

 ミズも二階に来た。

 ミズは私の横に座り、目を合わせようとしない。だがミズは唐突に言った。

「ごめん…」

 しかし私は許せなかった。バスのことといい、リョウをだまして連れて行ったといい、しかも二人きりになって何をしようとしたのか分からない。

 私はあの時、ミズが何をしようか分かっていた。あの顔の近さ。寝ている間に、リョウにキスをしようとしていた。間違いない。絶対そうだ。

 私はミズの言葉を聞こうとしなかった。

「ごめん…」

 もう一度ミズは言う。

 だが私は耳をふさいでいる。

「私…何やっていたのか分からない。でも、これだけは言える。あれは誤解なの。違うの。ただ、迷って、それで、さまよって、雨が降ってきて、私が崖落ちそうになって、それでリョウ君は、私の身代わりになって、落ちて、足をくじいて、洞穴があったからそこにいた…それだけなの…信じて…」

 何やっていたのか。それが気になる。あの顔を近づけたときの事を言っているのだろうか。それなら私を挑発しているに過ぎない。

 ミズはうつむいたまま、動こうとしなかった。

 私もミズのことを一瞬たりとも見ようとは思わなかった。目を合わせたところで、水がどんな反応をするのが目に見えている。

 私はいつまでもこんなところにいたくはなかった。同じ部屋で、同じ空気を吸っているのが息苦しかった。

 荷物から着替えを取り出し着替えた。その際、ちらっと横目でミズを見たが、まだうつむいたままだった。何を考えているのだろうか。自分の罪を考えて欲しいと思う。
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