シーソーゲーム
 まるでご臨終寸前の入院者と接しているかのように、私は気付かぬうちに両の手を握っていた。

「そうか…すまんな…こんな、ことに、なっちゃって…ゲホッ…」

「大丈夫だよ。今度また行けばいいじゃん。今日だけだよ。たまたまこうなったのは。きっと。明日になったら、きっと、元気になってるって」

「…はは…はぁ、はぁ…ありがとな…色々と…」

「いいよ。そんなこと。大丈夫だって」

「本当に…すまんな…」

「もう、謝らないで」

 私は泣きそうになりながら、必死に耐えていた。その苦しむリョウと共に、その上に感謝ではない苦しみの声が上乗せして、何とも聴き難かった。込み上げてくる感情を制圧したくて、もがいていた。

 沈黙が投入された。絶対平穏ではない未知の産物が、見えない壁を壊そうとしている。ハンマーで叩く音が鳴るたびに、石のかけらがぽろぽろと落ちる。もうひびができて、今にもその姿が見えそうだ。あ、そこに、いる。見えそうだ。聞こえる。感じる。

 すると私の耳に、それとは別に、とんとんという音が入ってきた。ゆっくりと、体中にしみこむような音。その一つ一つの音が不気味にこの空間、空気が笑っているように思えた。

 ミズは私の背後を通り過ぎ、ドアを閉めた。

 きっとミズキを手伝いに行ったのだろう。

 これで実質、二人きりになった。リョウと、二人だけに、だ。正直な気持ち、今、ミズのあの時の気持ちが分からないでもなかったような気がする。そして欲というものがいつの間にか私を飲み込もうとしている。驚いた。今、素直な気持ちが外見に表れている。
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