シーソーゲーム
 ミズはとうとう泣き出した。目を真っ赤にして、水面の明かりを見つめていた。

 私はどうしようかと考える間もなく、すぐにミズを引っ張って、陸に上がることができた。そのときのミズの腕の力は、さほど強くはなかった。

 陸に上がるなり、ミズは私の手を振りほどいた。

「何よ…私がいないほうがいいんでしょ…」

 私は知らずに手を出していた。

「バカ。何言ってんのよ。そんなわけないじゃない」

 ミズは頬を押さえ、叩かれたまま、動かなかった。涙だけがつつっと頬を統べるように流れた。

「死んでいい人間なんて…この世にいない…」

 反応しないまま、ミズはうつむいた。

 私は座り、湖に映る美しい幻想を望むことにした。たまにはこんなこともいい。誰もいない静かな真夜中に、美しい景色を見るのは初めてたっだ。過剰というほど興奮していた心が落ち着き、今まで貯まっていた疲れもどっと出た。

 続いて隣にミズも座ってきた。座った時に見えた顔は、泣いてできた枯れた細い道筋がいくつもできていた。

 私たちは何もせず、何言わずに座っていた。

 まだ夜は長い。湖の底に沈む宝は相変わらずまぶしいほどの光で包まれていた。

 ミズの様子を見て、私は機を見て話し始めた。

「正直には言ってね…あの時…キスしようとしたの?リョウが寝ている隙にさ。女の子だから、しょうがないよね」

 ミズはすでに泣き終えていたが、のどが渇いているのか、声さえ聞こえなかった。

「…がう」

「え?何?何て言ったの?」

 ミズは気立っている様子ではなかった。だが強く、深い声で言った。

「…違う」

 私はたじろいだが、そのミズの言葉の意味を知りたかった。

「え?何が」

「私、そんな汚い手を使わない」

 ミズは私を睨み、私を圧倒させた。そしてその行動に気づいたのか、はっとして、またゆっくりと前を見た。ミズは険しい表情になりながらも、続ける。

「私、あの時、本当にリョウ君のことが心配で、私のために怪我した足が痛そうで…しかも熱も出てきて、どのくらいかなって、あなたと同じように額に当てようとしただけなの…でも…」

 怪我した足はミズのために。しかも熱も出てきた。あなたと同じように額に当てようとした。
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