シーソーゲーム
「でもね、一つだけ、あなたに謝りたいことがあるの。私がリョウ君を呼びに行った時、あれ、味見の件で呼びに行ったんじゃないの。もう分かってたと思うけど…でも、これはフェアプレーじゃないって、後で後悔した。それで歩いて、さまよって、どうしようかと考えてたら、雨が降ってきて、地面がゆるかったから、私がちょっとした崖から落ちそうになった時、リョウ君が身代わりになって、落ちて、足をひねっちゃって、あそこに至ったの。しかも疲れと怪我に体力奪われたんだと思う…熱も出てきちゃって、でも、これだけは話したかった。ごめんって。こんなことになっちゃったって。でも、リョウ君ね、微笑んで、別にしょうがないよ、て。私が勝手に連れ出して、こうなっちゃって、もうどうしていいか分からなかくて…でも、嬉しかった…」

 あれ。何でだろう。こんな話で、涙が出てくる。ミズにとってのいい話で、私にとっての悪い話なのに、人のことなのに、私、何泣いているのだろう。

 溢れ出る涙に抵抗はできず、肩から伸びる袖で涙を拭く。

 私、何がしたいのだろう。リョウの前だと何もできない自分に、何ができるのだろう。ミズにさえ先に越されようとして、私は何をしているのだろう。気持ちだけがうわべで、勇気が持てない自分が情けない。私は、何をすればいいのか。私は無力だ。結局、人に先を越されて、自分は何もできない。勉強だけができても、違うことに考えようともしなければ、考える方法が分からない。いくら頭がよくたって、いくら待遇がいい人間だって、その時のチャンスやピンチに対応できないなんて、ゴミ同然だ。私もそのゴミの一種だ。

 無垢な気持ちの持ち主であるミズは優等生だった。ひねくれ者の誰かとは違う。

 その私が言えた言葉はこれだった。

「…帰ろう」
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