シーソーゲーム
 水面はあくびをして見せ、風は強く当たり、風は嘲笑し、地面は罵倒し、森林は蔑。挙句の果てに、空はそっぽを向いて、無関心だった。

 吸い込む空気は私の肺を、大きな穴をすっぽりと空けたように、貫通していた。外にいるのが不思議だった。裸の王様が歩いているのだから。

 私は逆風に耐えながらも、小走りでコテージに戻った。


 朝起きたら、まだミズは隣にいなかった。私はもしやとベランダに出て外を見てみた。しかし湖周辺に人だかりなどはなかった。そのことで私は一時の安心感が持てた。

 朝の湖のほとりに薄い霧がかかっている。そしてそれを夢幻のように一役演出をしているのが太陽。そのマイナスイオンの効果なのか、空気は清々しく思えた。だがベランダは寒かった。まだ夏の真っ盛りなのだが、私は上着を着ることにした。

 一階に降り、そこには起きているリョウがいた。他には誰もいない。

「おはよう」

 とりあえず挨拶を交わして、ここに誰もいないことが疑問に思った。

「他の人は?」

「朝ごはん、作りに行った」

「ミズも?」

「そう」

「それで大丈夫?熱は引いた?」

「ああ。だいぶよくなったよ」

 少しの会話だった。その会話は久しぶりに思えた。何年も、何十年も、前世に一度だけ会って話したことがあるような、それぐらい久しぶりに思えた。

「それよりさ、お前、早く着替えてこいよ」

「うん。そうする」

 私はまた階段を上がり、二階部屋に戻った。

 その後、朝食を作るのに手伝いに行ったが、もうすでにできていたところであった。その時のミズはなるべく周りに悟られないためなのか、いつもと同じように接した。だがその行動は私にとって痛々しい光景であった。

 キャンプは一泊二日で、結局リョウは何もしなかった。逆に災難だったであろう。遊びの矢先に起こった災害に見舞われたのだ。楽しいことなんてなかっただろう。

 そして私にも楽しいことなんてなかった。進展はなく、ただ滞るだけだった。だがリョウが元気になってくれたことが、私にとっての幸せだった。
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