シーソーゲーム
 集合場所には早くミズキが来ていた。もうおやつの時間は過ぎていて、太陽の光も変わろうとしていた。

「あ…早いわね」

 私は少し照れてしまった。着物姿を見られるのはあまり好かない。普段着ない上に、見られた時、人からじろじろと見られるあの注目が嫌だ。だがなぜ着ているのかと自分で問いかけると、赤面をしてしまう。

「おお…きれいだな」

 ミズキの目にどう映ったか分からないが、やはり見られることは好きではない。いくら幼馴染であっても、やはり嫌だ。そしてまたなぜ着ているのかと自分で問いかけてしまった。

「それで…リョウは?」

「さあ…まだ来てねえけど…」

「仕方ないわね…」

 私は仕方なく携帯を取り出した。開いてみると、メールが一件受信されていた。それはリョウからだった。しかも受信の時刻は昨晩だった。私の寝た後に届いたメールは、今ここで携帯を開けるまで、知られなかった。よくよく思い出してみれば、今ここで、今日は初めて開けた。

 そのメールを見てみると、なんとリョウは今日の祭りには行けないというのだ。驚きの一言でしか言い表せない。

「どうした?」

 ミズキは気付いていないようだった。

「リョウは…来ないって」

「そうか…」

 私たちはしばらく何も言わずにその場に留まっていた。どうすればいい。このままだと二人だけの、デートのようなものになってしまう。私はそんなつもりは更々ない。ここで別れてもいいと思っていたが、私から誘ったものだし。だけどきっとミズキも分かってくれるはず。着物の着付け、大変だったな。

 私が渋そうに帰ろうと言おうとしたその時、ミズキは言った。

「じゃ、しょうがねえから…行くか」

 少し恥ずかしそうにミズキは言う。勇気を振り絞った証なのだろうか。私とはまったく逆の考えを持っていたようだ。

 私もその一言で心が揺らいだ。行かないという意思から行ってもいいかなと思い始めたのだった。

「じゃ…行く?」

「ああ…」

 恥ずかしかった。二人で並んで歩くのが。話し出そうとしても、上手くいかない。何だろう、この気持ち。隣にいるのがリョウではないのに、ミズキなのに、胸の鼓動が速くなっていた。私は今、確実にミズキを意識している。なぜだろうか。
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