シーソーゲーム
「おい、待てよ」

 ミズキの声は聞こえず、にぎやかな人声にかき消されていた。陽気な笛や太鼓の音が明るい空間を作り出している。現実的な明るい光景と幽玄で爽快な光景が交差して、夜警よりも美しい光景が広がっている。

 私は夢中に祭りに飛び込んだ。

 屋台の間を歩く。ミズキはその後をついてくる。そして並ぶと、何を食べようかと問いだす。だが私はまず一周、この祭りの概要を見てみたいと思っていた。だがミズキはそんなことに気をとめず、すぐそこのカキ氷を買った。

「お前は買わないのか?」

 ミズキは無神経に突発的に言った。

「まだ、いい」

 歩けば歩くほど、見えるのは人、人、人。まるでどこかで生産されて流出されてきているのか、その多さには毎年驚かされる。ここに何人の人がいるのか。もしかしたらここに日本の人口の半分がいるのではないかと。だがそんなことはない。ここにいるのはごく一部の人間の集団である。市内とせいぜい隣市から流れ来る人たちだろう。具体的に表した数字やデータは何一つとしてないが、ここにいるのはほんのごく一部の人間の集団なのだろう。

 私は世界と比を比べていた。世界の人口が六十億で、ここにはごく一部。だが私はその六十億という数字がよく分からなかった。

 あらゆる色を重ねた提燈は前から後ろから、幾度歩いても減る傾向はなく、逆に増えていた。

 この祭りは市内の中では大きいほうだが、そこまで大きくはない。神社の周辺と神社の敷地内で行われているからだ。上から見ればきれいな四角形に見える。

 私たちは一旦、神殿の前まで来た。ここにはあまり人だかりもない。この神殿の前で屋台は終わりで、振り返ると、たくさんの人だかりが見えた。この中を割ってここまで来たのだなと思うと、何だか複雑な気持ちにならざるを得なかった。

「どうする。戻るか?」

 ミズキはどうしようもなさそうな顔で聞いた。

「うん。そうしよっか」

 私も何かを買わねばと思った。それこそ無駄遣いに思えるが、それはムードとこの空気に溶け込むことが大事だと思った。
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