シーソーゲーム
 とどめの言葉をぐさりと言われた。言わないで欲しかった。これだけは、本当に、言わないで欲しかった。ルイが好きだだけでよかった。そこまでで食い止められたなら、そうして欲しかった。

 もうこれ以上、言わないで。

「俺…ルイを愛してる」

 このたった十文字の言葉をいじって、いろんな文に言い換えている自分がいる。文字を足したり足さなかったり。単語の配列を変えたり変えなかったり。

 俺、お前じゃなくて、ルイのことだけしか愛すことができない。

 頭の中が真っ白になり、空白の時間が流れた。頭がくらくらする。

 気付いた時、ベッドの上で寝転んでいた。どうやって戻ったのか分からない。あの公園から、自転車に乗ってこないで歩いて帰ってきたような気がする。いや、走ってか。それともちゃんと自転車で。帰る途中、何度も転んだような気がする。その時アスファルトをにじませて。風は吹いたか。石でもあったか。コンクリートにひびでもあったか。何で転んだのか。

 風は吹く。ヒューと吹いて、無理にでも窓の隙間から入ろうとしていた。

 私は泣くことができなかった。自分を喪失しているわけだから、意識も人間が持つ心もどこかの広い大空を飛び回っているみたいに、自分の体からすべてが抜けて、もぬけの殻化となっている。

 目は死んでいた。ドライアイ寸前のように目は乾ききっていた。

 はるか遠くの繁華街で車同士がクラクションを鳴らし合っているのが耳に入ってくる。瞬く星は今にも落ちてきそうであった。ライトアップされたジオラマのようで、もしかしたら天地が引っくり返ってすでに星は落ちていたのかもしれない。

 ここで、私は、何をやっているのだろうか。私は、何のために生きているのだろうか。私は、何だろうか。私は、何。昨日と同じように、誰かに教えてもらいたい。私を。世界を。すべてを。

 私はベランダに通じる引き戸を開けた。そして外に出た。まだ夏なのにも関わらず、風は冷たかった。
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