シーソーゲーム
 渋の言うことは初めから、すべては何もかもが不可解で、理解ができなかった。その一言を聞いた時、私は初めて理解できたような気がした。

 自己に幸せがもたらすことができない人間が、他人に幸せを与えることはもっとできない。

 世界中の幸せは私が握っている。私の感情が左右されることにより、世界も変わる。事故だって起こった。あれもそうだと渋は言った。私の感情ガがこのまま下降していくのであれば、世界は破滅へと導かれる。

 私が望んだわけではない。神になりたいと言ったわけでもない。だがなっていた。誰が決めたのか分からないが、とりあえず私がいることで世界は悪い方向に向かう。

 こんなことになるならば、私が幸せになろうともっと努力していた。リョウにもっとアタックしていた。私は時間があると思っていた。余裕があると思っていた。もっとリョウといられると思っていた。チャンスは来ると思っていた。だが違った。自分からチャンスを迎えに行かねばならないのだった。実はそこにチャンスがあったのではないのか。

 私はこう思ったことがある。もし世界を変えれるなら、と。もしこんなことができたなら、何でも願いが叶えられるなら、と。

前にこんなものを見たことがある。テレビの番組での話であるが、世界に散らばる、貧困であえいでいてもめげずに生き続ける子供たちのドキュメントだった。その他と別に、戦いに巻き込まれる子供。そこに住む民衆。逃げ惑う民。なくならない紛争。地雷で飛ばされて片足のない人。この他にも色々と。

 もし自分が幸せになれたら、世界はもっといい方向へ進めたい。導きたい。前から思っていた。刺激なんか入らない。ただの平和なんていらない。平和の中の幸せを、それがこの世界に必要だと思う。どの世界にも、どの家庭にも、どの人にも必要だと思う。近くにそのチャンスがある。私はそれをつかみたい。

 私はいつの間にか、自分が神であることを信じていた。いや、自覚していた。

 だがもう遅い。私はこの世から存在さえなくなってしまう。死んだ人は地獄か天国かだけれども、存在がなくなった先はどこだろうか。無の世界か。

 もう私にはできることはない。上半身が消えようとしている。
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