シーソーゲーム
 戻れるなら戻りたい。リョウから幸せを貰うために。春でいい。あの、今年の始業式の日に戻れたなら。それでいい。戻れるなら、戻りたい。

 すると地面が揺れだしたのか、部屋がゆれている。私は顔だけが宙に浮いた状態になり、その揺れは感じていない。すると同じようなタイミングで、突然台風のように吹き荒れだす風に乗じ、大粒の雨は窓を強く叩き出した。

「来た…」

 外は花火が落ちてきたような光を放ち、そして大きな音が鳴った。何か落ちたらしい。そして水の音も聞こえる。

「世界の崩壊…」

 渋は地面にゆれるのにも屈せず、直立で立ち続けた。

「あなたが望むなら…できる…」

 そう言ったのを聞くと、私は部屋を照らし出した。顔だけしかないのだが、どこも光を発していないのを見ると、私からであった。

「後戻りは…できない…」

 渋はいまだ、カーテンを見透かすようにして見ている。

 望むならできる。

 私の目の前はぱっと明るくなり、真っ白になった。


「ここは…」

 私が見る限り、ここは私の部屋だ。しかし外はまだ明るい。夕暮れだろうか。ベッドの上に乱雑に脱ぎ捨てられた制服がある。机には見たことがあるもの。確か捨てような。

 私の体は戻っていた。顔だけではない。上半身も下半身も、腕も足も全部ある。あれは、夢だったのだろうか。

 今日はいつだろうか。

 私は携帯をとろうとしたが、最後に置いたところであろう場所にはなかった。

 部屋を出て、リビングに向かうと、ソファーの上に携帯はあった。

 携帯を開き、日付を見てみると、願ってもない始業式の日。私は戻ったのだ。とりあえず、リョウに電話してみようと思った。この日、何をしていたか、覚えていない。

 電話をかけると、リョウはすぐに出た。

「もしもし、アズサ?」

 リョウだ。最後にあった、あの公園のリョウではない。まだ新鮮味のある、口ごもっていない、前のリョウだった。

「リョウ?ちょっと、今日あったこと、教えて欲しいんだけど…」

「今日か?」

 リョウは不思議そうに尋ねる。

 本来であるならば、今ここにいる私は、きっとリョウと一緒に過ごしたに違いない。こんなことを聞くのは変だ。

「…ああ。構わねえけど…」
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