シーソーゲーム
 まあ、避けられないこともあり、やはり二人は少々不審そうに私を覗いた。

「お前さ、今日よ、大丈夫か。何か変だぞ。暗いし、どうしたんだ」

「い、いや…別に…」

 この時が本当の山に思えたこれが越えられることができるなら、これからのことが上手くいくだろう。そうやって自分を追い詰めて、乗り越えようと思ったが、どう乗り越えればいいのだろうか。

 そうだ。もしものためのマニュアル。あれ行こう。

「今日の朝さ、嫌なことがあって…気にしないで」

 ミズキはそうかと顔が和らげたが、リョウは首をひねって、まだ怪しそうに、これから私を徹底マークしようという目であった。

 その後、私たちの間に沈黙が訪れ、食べ終わるまで、何も話さなかった。

 しかし、やはりここでもミズキは切り出した。

「じゃ、行こうか」

 カラオケに向かう途中。私は後ろから追いかけることしかできなかった。まだ不慣れな接し方だった。

「やっと、着いたな」

 それは私にとって、今日一番の思い一言であっただろう。ここに来るまで何一つ話さずにやって来たのだ。やっとという言葉が何よりもふさわしい。

 カラオケ店舗内に入り、私たちは部屋へ向かった。私はすでにその時点で、何を歌おうか決めていた。ここで、そのすべてを歌おうと思った。

 部屋に入り、雑誌を左手に、リモコンを右手に持ち、素早く打ち始めた。打ちなれているリモコンで、ある程度覚えている番号だ。番号を打ち終わり、リモコンからマイクに持ち替えた。

「…よし」

 曲は流れた。私が一番得意な曲だ。

「アズサ、この曲、昨日お前が散々歌い散らしたじゃねえか」

「え…知らないもん。そんなの」

 確かに知らなかった。といより、覚えていない。

 そういえば、リョウとカラオケに来たのはいつ振りだろう。本当は昨日のはずなのだが、私にとっては、夏休みに一回行ったきりだった。その時のリョウは元気がなく、特に歌おうともせず、結局私たちはカラオケ店から間もなく出たのだった。

 それがどうだろうか。今日はリョウもミズキも生き生きとしていた。私は嬉しくなり、今日は永遠に歌おうと思った。一緒にこの空間にいたかった。
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