シーソーゲーム
「ねえ。何かあったの?」

「ん…な、なんでもないよ」

 動揺しているのが何とも怪しい。

 次の瞬間、私は気付いた。二人で話していた。明日、リョウは用事がある。ルイは嬉しくいる。そして前までリョウとルイは、付き合っていた。いや、付き合うだろう。それを全部、針の穴に糸を通すと、すべてしっくりくる。答えは、デートだ。まだこの時期は付き合っていないが、もしかしたら、また…。

 私は誰よりも早く着替えると、出る前に一度振り返ってルイを見た。背中だけだが、それは明らかに喜びが見られた。

 そしてまっすぐ家に帰った。私の心には、ズシリと重い鉛がぶら下がったままだった。足が重くて、体がだるくて、リョウの家の前を通る時、急にスピードを速めた。

 家のドアを開き、リビングに行くと、いた。

「…どうすればいいんだろう」

 渋は寡黙ながら、いつも正しいことを言う。まるで軍師のようだ。

「…あなたのしたいことをすればいい…」

 いつも同じ事を言われる。だがそれ以外、人のことに口出ししないことは分かっていた。

 渋とは前に一度会った。始業式後日だ。その時の渋と比べると、話し方がだいぶ人並みに話せるようになっていた。

「だって…また、同じことを繰り返すかも…」

「…あなた次第。彼女はまだ彼女の立場を知らないだけ…」

「好きなのかな…」

「…うん…」

 私は悩んだ。どうすればいい。私もアプローチをかければいいのだろうか。でも幼馴染だから、そんなことをするのは恥ずかしいし、それにいつもの遊びだと思われて流されてしまうことに違いない。

「…気になるなら、聞いてみればいい…」

 それも一つの方法だが、何を話せばいいのか。

 しかし、もはや手段は選べなくなった。何も無い。他に思いつかなかった。気付いたら、携帯を手にとっていた。
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