シーソーゲーム
「はい、もしもし」

「…私。ちょっと時間ある?」

「ああ、ちょうど今、暇だったところだった。それで、何の用だ?」

「いや…用ってことじゃないんだけど…それよりどうしたの?何か変だよ?」

 いつもと違って、リョウの話し方は変な調子だった。何ていうか、はきはきとしている。何かあったのだろうか。

「いや、特に…いや、あった」

「どっちなのよ」

 リョウはおかしい。明らかにおかしい。なぜこんなに動揺しているのだろうか。

 渋は私を見たまま、ソファーに背筋を伸ばして座っていた。

「お前さ、帰ってくる途中、何かおかしくなかった?」

 私にはそんな覚えが無い。いつもの帰りだった。

「え?何にも無かったけど」

「いや、さ。何て言うか…何もなかったて言うか…止まってたって言うか…」

「一体何なのよ」

「いや…いつもと異様だったんだよ。何て言うのかな…俺が…俺たちが…別の世界にいたみたいでさ」

「ふーん…」

 その時、私には思い当たるものがあった。私がまた極端に落ち込んだからだろうか。私が外にいた時はそんなこと無かったと思うが、なぜだろうか。

「それで、用件は?」

「え…忘れちゃったわよ、バカ。あんたが悪いんだからね」

「何だよ。お前が聞くからじゃねえか」

「それよりも、明後日ね。忘れるなよ」

「あ…ああ」

 最後は気まずい感じだったが、こうも軽々しく話せたのもまた久しぶりに思えた。球技大会のときとは別の安堵感だった。

 携帯を置き、ソファーに寄りかかった。

 これで確かに分かったことは、私の気持ちはあまり動かないほうがいいということ。そして明日、リョウはルイと遊びに行ってしまうこと。いっそのこと、ついていってしまおうか。

「ねえ、コウ。あんた、何でもできる?」

「…何でもはできない…」

「じゃあ、こういうことは…」

 私は話した。渋は特に反応もせず、ただ私の目をじっと見つめて聞いていただけだった。それが私の話の妨げになり、時々渋から目をそらした。

「…できる…」
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