シーソーゲーム
 決めた。好かれるようになればいいんだ。

 私はそう心に誓い、グラウンドに出た。

 リョウたちはどこだと探すと、すぐに見つけた。だが私は恥ずかしさでまみれていた。すぐにその場から逃げたくなったのだ。頬も高潮し、背中も汗が流れてきた。

「今日もガンバろ。じゃ」

「おい、じゃって、ここでやんだぞ」

 私はその言葉を聞かずに、一目散に逃げた。


 ゴールデンウィークは何もしなかった。何もできなかった。一日中テレビを見て、寝て、家でごろごろと時間を浪費している日々。何やってんだか。私は。

 学校も終わり、帰宅部の私は、同じく帰宅部のリョウとミズキをまたカラオケに誘おうと思った。前と比べて、だいぶ楽に話せるようになった。

「ねぇ、帰ろう。今日もカラオケだぞ」

 ミズキは誘ったが、リョウは岸と話している。

 今年、転校してきた女子で、球技大会のチームも同じだった。私の席に近かったこともあって、結構親しくしている。容姿も可愛らしく、スタイルはいい。少々照れ屋で、猪突猛進の私とは、まったく性格が逆であった。おしとやかで、静かで、女の鏡であった。

 私はあの時のように、少々ムカついた。

「ねぇ、カラオケ行かない?ミズキは行くって」

「ん…そうだな…まあ、いいぞ」

 リョウは取り残された岸にじゃあねと別れを告げた。

「ほら、行くわよ」

 私を先陣に、カラオケに向かった。


 梅雨に入った。

 自転車登校の私にとってはこれほど嫌なものがない。だから今日ぐらいはと、バスに乗ってきた。

 いつもより早く着いてしまった。自分の席に座り、リョウとミズキが来るのを待った。外を眺め、あー憂鬱だ、と小さい声で呟いた。

「おはよう」

 私の後ろを通って、岸は自分の席に座った。

 そして続いて、ミズキと一緒にリョウも教室に入ってきた。

「ははは。びしょ濡れだぁ」

「うるせえ」

 リョウがハンカチで顔を拭こうとして、ポケットに手を突っ込んだ。

「あら…」

 どうやら忘れたようだ。私はハンカチを貸そうとしたが、先に出したものがいた。
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