シーソーゲーム
 学校に向かう足取りは重かった。ゆったりと歩く。それで、一時間目は遅刻してしまった。遅刻するなら休もうと、一時間目だけを学校外でコンビにでも寄って暇をつぶし、一時間目が終わりそうな時刻で学校に向かうと、校門の前でリョウに会った。逆から来ているのに気付かなかった。リョウもまた、私と同じような感じなのだろうか。

「おはよう…」

「ああ。おはよう…」

 双方とも元気がない。暗い部分が多く、まともに顔を合わせることができなかった。二人はまるで、手はつなぐが体は遠ざけるカップルのように、距離をあけて歩いた。教室に向かって歩くのは簡単で、だが開けたくはなかった。

 その扉を開けるのはどちらかと争った風にしていると、チャイムが鳴り、ドアから勝手に開いた。出てきた先生は私に強い眼光で睨みつけ、そして出て行った。

 私たちは教室に入ると、一瞬息の止まるような静けさが一時訪れたが、また騒ぎは戻った。机に向かう途中、ルイは私たちを見なかった。見ようとしなかった。

 ミズキたちも不思議そうな二人だけの登校を、まじまじと見ていた。

 この一日、変な質問などはされなかった。唯一されたと言えば、担任から一時間目は何で休んだのか、ということだけだった。周りからの冷ややかな目が気になったが、逆手に捉えれば嬉しく思える。ちらちらと見るルイの目も面白い。

 私たちは学校で話さず、学校が終わると、特に黙ったまま、帰りは三人で帰った。ミズキはいづらく、Y字路に着くまで、何も話さなかった。こんなこと、初めてだった。

 ミズキは去り、また二人だけとなった。いづらい空気が何とも苦しい。ただ帰り、ただ別れ、ただ家に着く。

 その暮らしが幾日も続くと、さすがに慣れというのか、私は両と話せるようになっていた。リョウもそうだ。体も軽くなったし、もとの生活も取り戻せたし、上手くいけば、リョウとも友好な関係を築けるかも知れない。私の望みどおりになるかもしれない。もんをぶち壊すのも時間の問題じゃない。

 あの時、言っといてよかった。恥は一時、このことだな。

 私は浮かれていた。足が地に着いていないようで、簡単に足がすくわれそうだ。

 しかしそういう野望は叶えられない。唯一叶えられたというのは、過去の中で一人もいない。邪魔は必ず入るものだ。
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