シーソーゲーム
 しかしそれも束の間。話すのに夢中でどこに向かっているのか分からないでいた。そして着いたのが前に見たことがある洞穴だった。私は洞穴前の吹き抜けに出てしまい、そこの前で恐ろしい体験をした。竜の息吹のごとく、洞穴が風を吸い込んでいるようだったのだ。

 私はそれを怪しみ、会話を一旦やめ、一度そこから離れて、もとのキャンプ場へ戻ろうと言った。

 そしてまた林に入ろうとすると、木の陰から一つの人影がすっと目の前に現れた。それは見たことのある容姿だった。

 確か、川上沙奈。同じクラスメイトだ。私が呼んだ一人でもある。彼女もまた渋と同様、宇宙人で、だが同じものではない。似たもの同士と言ったものだろうか。私が求めたわけだから。

 私は安心し、リョウは驚いた。安心したというのは、警戒態勢を万全に敷いていたからだ。それにしても、こんなところで何をやっているのだろうか。私は気になり、川上の前まで歩こうとした。

 そして近づきながら、どうしたの、と聞いてみると、突然、川上は不気味な笑みを浮かべた次の瞬間、私の周りに紫色の膜が張られた。

 不吉な予兆はこれだったのか。

 空は紫で、木も紫で、後ろを見てみると、リョウはこの中にはいなかったようだ。

 そしてまた川上のほうを見ると、川上は笑いながら私に殴りかかろうとしていた。爪は伸び、猫のようだった。気付いていたらもう目の前にそれはあって、私は一歩も動かなかった。

 すると鋭い音と共に現れたのが渋であった。彼女はこの不吉な予兆が気になって連れてきたのだった。もしものために、信頼できる人がいたほうがいいと思ったからだった。

「大丈夫…?」

 渋はそれをか細い五本指で止めていた。その指先からは、弱々しい光が出ていた。

 川上は後退し、フラフラとした足で倒れそうになった。すると膝から足首にかけて、無数の引っかき傷のようなものがあった。さっきまでなかったはずの青いあざのような傷は尋常ではなかった。渋がやったのだろうか。もしそうであるのならば、渋はいつ攻撃をしたのだろうか。

「クソ…なぜお前が…」

 渋は応答に答えようという意思はしないのか、無言で、たった一歩で離れた川上の前まで移動した。
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