シーソーゲーム
 よし、と決め、私はリョウだけにメールを打つ。そして時刻と待ち合わせ場所を知らせるメールを送った。リョウからの返事は早く、正直驚いた。よほど暇なのか、それとも机にとりついて勉強か。将来は決めていないと言っていたのに。

 ミズキにも連絡をした。今年は行けないと嘘のメールを送った。まさかリョウと一緒に行っているなんて思われたくない。いつまでも友人でありたく、それに相手を傷付けたくなかった。

 そして二人で祭りに行き、雲行きは一切怪しくなく、雨もなく、快適に祭りを楽しめた。楽しかった。誰もいない境内で気分だけのお参りをして、祭りに戻るなり食べ歩き、焼きそばを分けて食べたり、浴衣を引きずりながら今日は至福の時を迎えた。楽しい時とはこの時だろう。幸せとはこれだろう。私は生きる新しい瞬間を見つけた。

「お、そろそろだぞ」

 絶景丘に登ると、こんないい場所であるのにまったく人がいないので、優越感を十分に満喫した。ベンチに座り、しばらくしないうちに、まだ完全に闇に包まれたわけではないが、花火は上がった。大きな花を咲かせ、まるで線香花火が散るように消えゆく寂しさ。祭りの後のあの物寂しさが心身と伝わる。だがそれが夏の風物詩。夏が終わろうとしている今、見るのはとても風流だ。同時に夏休みも終わる。

 その平行に進む時間を感じながら、私たちは寄り添って花火を見ていた。打ちあがるたびに咲き、消え。花火は消えて欲しくはない。終わって欲しくない。このまま時間が止まって欲しい。もし終わってしまったならば、リョウとこのままでいられなくなる。大きく言えば、別れそうで、この関係を保てないで、終わってしまいそうな気がした。

 辺りは暗くなり、さらに一層花の色がよく分かる。

 大きく見開いたリョウの目を見てみると、何か物寂しげに見ているような気がした。それは、そう。あの、何かを思い出そうとしている。思索か模索か。冷たいものでも見ているような、しかし懐かしささえ感じる。

 人の気も知れずに、花火は終わった。楽しいというわけではない。こういう時間は早く進むのだ。

 終わったというのに、リョウは動こうとはしなかった。それは私には予想外の出来事だった。すぐにでも動くと思っていたのだが、私はこのままでもいいと思っていた。
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