シーソーゲーム
 またリョウの横顔を見てみると、まだあの、切ない目がどこの星を見ているのか分からない。本当に花火を見ていたのか。花火の向こうの星、星の向こうの銀河、銀河の向こうの何を見ていたのか。

 もしかしたら私が隣にいることを認識せずに、ただボーっと座っているのか。それならどうしてそんな状態でいるのか。

 私は寄り添いながらも、無性な孤独感を感じた。また一人になる。

 周りには先ほどよりかは人がいた。その人たちは花火が終わるとすぐに帰っていった。

 この状況は、しんみりと、閑静で、街を走り回る車の音、ダイヤのように光り輝く夜景、宝石を池の底に沈めたような星らがそこにある。

 何をしたらいいのだろう。もしかしたら、何かをリョウは期待しているのではないか。それも特別なもの。

 そして分かったように私はリョウを見た。だがまだボーっとしている。そして私は振り向かせるべく、リョウの肩を突いた。そしてリョウは我に帰ったように気付いた。

「そうだな。帰るか」

 リョウは立ち上がり、さっきまで猫背になっていた背中を伸ばした。

 私は予想と大きくはずしたことに、気持ちがそがれてしまった。もしかしたら期待していたのは私なのかもしれない。

 その帰り道、特に何もなかった。下駄がカツ、カツと音を立てるだけで周りから妨げるものはない。私の胸はドキドキと高鳴るばかりで、行動には起こせない。

 この夜の公園も何かとぼんやりと霞んでいて、そこに浮かぶ白い球が何とも幻想的であった。そこの公園には、先客がいた。

 リョウの家の前で、リョウは何もなかったように言う。

「じゃ、これで」

 リョウを見送る私の姿は、どう見えているだろうか。自分を客観的に見てしまうと、葬儀場まで死者でも見送るような不恰好に見えた。

 リョウの後ろ姿を追いかける自分が、嘆かわしく思えた。

 勇気がほしい。言う勇気がほしい。

「ねえ、リョウ。私のこと…好き?」

 リョウは振り向きざまに言う。少し間があったかもしれないが、緊張のせいでそんなことは分からない。

「ああ。好きだよ」

 前とはまったく違う展開に進んでいるのが分かった。

 私はそのことを聞けるだけで嬉しかった。

「…じゃあね」
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