シーソーゲーム
 照れながら私は言うが、リョウは微笑んで優しく言った。

「じゃあな」


 夏休みは終わった。だがここまでだ。私が知っているのは。これからは私も知らない未知の世界がある。踏み入れるのは大して恐くはなかった。今回は自信以上の味方がついている。

 そして始業式の日。私はリョウを呼び出して、今頃と思う告白をしようと思い立った。あの花火の帰りの勢いを乗せて、私は成功すると思っていた。

「リョウ…付き合って」

 果たしてどんな言葉が返ってくるか、胸の鼓動は早まる。

「何だよ、かしこまって。こんなところまで連れてきてさ…」

 一度リョウは改めた。

「で、どこへ行くんだ?」

 どこまで空気が読めないのか。昔から空気を読むのは上手ではないほうであった。だがこの時ぐらいはと、心から叫びたい。

「そうじゃなくて、私と…さ。ほら…つまり…好きだから、付き合って…さ…ほしいんだけど…」

 二度目の告白は、急に恥ずかしくなってしまった。波から落ちたサーファーのごとく、私の精神は崩れかかっていた。リョウの顔を、ちらちらとしか見ることができない。

「え…?」

 リョウは急に戸惑い、うつむいた。この状態を見ると、本当に理解をしようとしていなかったのだろう。もしくは単に間違ったのか。空気を読まずにふざけていたわけではないと見ると、本当に戸惑いを隠せないでいる。

「俺…」

 リョウの言葉は詰まる。だが必死に言葉を探しているようで、出てくる言葉は途切れ途切れだった。

「もう少し待てないかな…俺、ちょっと…返事は後ということで…ダメかな?」

 今すぐほしかった返事。もう分かっていた。

「もう…いい」

 私はその場からすぐに立ち去った。リョウを見ないで。リョウはどんな顔をして私を見ているだろうか。もしくは見ていないか。自分のふがいなさで見れないでいるだろうか。

 私は家に戻り、すぐに返事をくれないリョウについて考えた。
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