シーソーゲーム
 携帯を切って、楽譜を持って、早速部屋を出た。

 外は寒い。そういえばさっきまで小雨が降ってたっけ。もう秋なのは間違いなく、紅葉に生え変わり、だがその寿命は短く、もう散ろうとしていた。最近の地球温暖化には目が留まる。他の地球の問題は今、この地球上全体の問題だ。いくら高校生の私にだって、それくらいの危機感は分かっている。

 まあ、今はそれよりも、先にしなければならないことがある。

 コンビニに着いたが、リョウはまだ来ていない。リョウの家のほうが近いはずなのに。外は寒いので、中に入り、雑誌を読み始めた。

 しばらくすると、リョウは窓をこつこつと叩き、私を外に呼び出した。

「何だ。用って?」

「用って…あれ?」

 ファッション誌を見ていて、あ、これがいいと、名前を覚えるのに記憶のスペースを開けていた。しかしすぐに思い出した。

「あ、そうだ。水崎、怪我したんだよ。それでさ…」

「俺に出ろと」

 飲み込みの早いやつだ。あの告白の日から、まだ返事は貰っていない。だが、あれからだいぶ変わった。

 リョウの返事は早く、意外だった。

「ああ、いいよ。お前のそれ、楽譜だろ。見せてみろよ」

「え…あ、うん」

 いともあっさりとことが進んでいることに驚いた。

「…面白いな、お前」

「何がよ、バカ。何が面白いのよ。一生懸命に書いたんだから」

 リョウはそれを見て、明らかに笑いをこらえているように見える。

「いや…さ。ちょっと直せば…もっと良くなるのに…悪くしてばっかで…ハハハ」

 ついに噴出した。もう私も黙って入られない。

「バカバカ。私だって、アンタみたいなセンスが欲しいわよ」

 将来の夢は特にない。だが誰かに負けるのは人一倍嫌な体質で、いつもリョウには負けたくはないと思っていたが、男女という格差のほかに、量には展性的な音楽センスがあった。それには唯一、私は感服してしまう。しかしそんな才能を持っているのに、蔵に入れたまま出そうという気はないみたいで、今は音楽活動をやめている。本人曰く、疲れたらしい。親父かと突っ込みたい。

「それならなんで断ったの?」

「いや…その時は気が向かなかったんだよ。あるだろ、そんなこと」
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