I love you に代わる言葉
11話 二個の彩~ニコ ノ サイ~
 イライラしながら、盛大に溜息をついた。
「――ほら、さっさとしろよ」
 大口を開け、馬鹿みたいな面をしながら欠伸をし、のろのろと靴紐を結ぶ今井に投げ掛けた台詞。今井はふぁぁっともう一度欠伸をすると、これまたのろのろと立ち上がった。
 月曜日。ボク等はこれから学校へ向かう所だ。
「二人とも行ってらっしゃい」
 キッチンから顔を覗かせ、今井の母親は言った。
 ボクは「うん」と、今井は「ああ」とぶっきらぼうに返事をした。
「――ったく。何で起きられないんだよ」
 バス停へ向かう道中、ボクは苛立ちを露に言った。
 苛立たせているのは勿論今井だ。そう、全てこいつの所為。理由はこいつの寝起きの悪さだ。
 それはもう、想像以上に最悪だった。二度と起こしたくない。毎日起こしていた母親を尊敬する。何度起こしてもこいつは、「……あと五分……」と消え入りそうな声を出し、また眠りにつく。ムカついたから一度頭を叩いたが、「いてぇなぁ」と情けない声を出してまた寝る。暫く放置し自分の身支度を整え、今井の母親が用意してくれた朝御飯を平らげてからまた今井を見に行くと、やっぱり寝ているんだ、座りながら。もう一度頭を叩くと、いてっと声を上げた後、目を瞑りながら「起きた起きた」と言う。ここらで限界だった。苛立ちは頂点に達し、最終的にボクは、思い切り蹴りを入れて起こしたという訳だ。
 朝の情景を思い起こしながら、ボクは舌打ちをした。
「いやぁ~、今日はキチガイな睡魔だったわ」
「アンタのその思考が気違いじゃないのか」
 眉を寄せ不機嫌を露に言い放つが、今井は「ははっ」と悪びれもなく笑っている。何なんだこいつは。
 起きてから何度目になるか分からない溜息をついた。いちいち腹を立てても多分無駄だ。こいつのペースに巻き込まれるだけだろう。
 心底もうすぐ夏休みで良かったと思った。取り敢えず、朝早く起こすのはあと二回で済むからな。



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