プリンセスは腕まくらがお好き
自販機の白い光に照らされながら、デイリー製菓のロビーのすみでわたしは立ちすくんでいた。
3社のプレゼンが終わり、解散となった。
結果は来週半ばには出るそうだ。
(結果は分かってる)
ライラックの、あの男の企画になるだろう。
それは、あっちの企画が勝っていたせいではない。
(私のせいだ……!!)
悔しさに目頭が熱くなる。
企画を作り込まず、安心していた自分のせいだ。
ライラックのプレゼンを聞いて頭が真っ白になってしまい、自分のプレゼンがめちゃくちゃになってしまった、自分のせいだ。
せっかく、みんな手伝ってくれたのに……
先輩には先に帰ってもらった。
どういう顔をして帰ればいいか、分からない。
(雄治ともダメになって、立ち直ろうとしたけど、さすがにこたえるなぁ)
「篠宮さん!」
声がして振り返ると、来栖さんがこちらに向かっていた。
「来栖さん……」
来栖さんの顔を見たとたん、恥ずかしさで胸がはちきれそうになった。
あんなふうに余裕しゃくしゃくで期待させて、少し触らせて優越感にひたって…それでも、プレゼンがあれじゃあ何にもならない。
「来栖さん、すみませんでした。わたし……」
「篠宮さん、来て」
来栖さんが、突然わたしの手首をつかんだ。
脇にあった扉にカードキーをかざし、奥の通路へと手をひかれる。
「来栖さん、どうしたんですか……っ」
来栖さんは答えず、足早に前へ進む。
普段は使われていない業者用通路のようで、シン、と冷たく静かだ。
来栖さんは途中のドアにまたカードキーを押しあて、私をドアの向こうへ押し込んだ。
「あっ、……来栖さん……?」
ドアが締まり、ピーとロックされた電子音が聞こえた。
部屋は狭く、暗い。倉庫か何かだろう。
「篠宮さん」
来栖さんの腕が伸び、わたしは壁へと追いやられた。
「篠宮さん、僕はね、君の企画を押し通すことができる」
「えっ」
来栖さんの顔は間近に迫っていた。
いつもの冷ややかな面持ちが、鬼気迫っているように見える。
「でも、あんなプレゼンじゃ……」
「プレゼンの内容はひどかった。しかし、企画はほぼライラックと同じだ。
僕の権限なら、エイチドットで押し通すことができる」
静かな室内に、わたしたちの息づかいだけが響いた。
(それって……)
「分かるかい?」
来栖さんが、わたしの目をまっすぐに見つめた。
セットされた前髪がはらりと額に落ちた。
(どうしよう、でも、今は彼氏もいないし……)
(いや、絶対に寝ないって決めたもの)
「来栖さっ」
断ろうと口を開いたとたん、来栖さんの唇がかぶさった。
壁に手首が押し付けられる。
倉庫の壁の冷たさだけが、ひんやりと背中に感じられた。
「ん、んっ」
舌が唇から割り込んできた。
顎をおさえられ、吸い付くように舌をからませる。
顎から手は胸元に降り、わたしのジャケットのボタンを外した。
「いや、来栖さん、やめて……っ」
唇が離れ、そう懇願したが彼は力づくでわたしのジャケットを脱がせ、自分のタイを外した。
「こうなることは分かっていたんだろう?」
端正な顔を崩さないまま、冷淡にそう言った。
「いつも僕を誘惑しようとしていたね?それに、乗ってあげようというだけさ」
「それは……っ」
また言葉を遮られるように、唇が重なった。
噛み付くような、荒々しいキスだ。
3社のプレゼンが終わり、解散となった。
結果は来週半ばには出るそうだ。
(結果は分かってる)
ライラックの、あの男の企画になるだろう。
それは、あっちの企画が勝っていたせいではない。
(私のせいだ……!!)
悔しさに目頭が熱くなる。
企画を作り込まず、安心していた自分のせいだ。
ライラックのプレゼンを聞いて頭が真っ白になってしまい、自分のプレゼンがめちゃくちゃになってしまった、自分のせいだ。
せっかく、みんな手伝ってくれたのに……
先輩には先に帰ってもらった。
どういう顔をして帰ればいいか、分からない。
(雄治ともダメになって、立ち直ろうとしたけど、さすがにこたえるなぁ)
「篠宮さん!」
声がして振り返ると、来栖さんがこちらに向かっていた。
「来栖さん……」
来栖さんの顔を見たとたん、恥ずかしさで胸がはちきれそうになった。
あんなふうに余裕しゃくしゃくで期待させて、少し触らせて優越感にひたって…それでも、プレゼンがあれじゃあ何にもならない。
「来栖さん、すみませんでした。わたし……」
「篠宮さん、来て」
来栖さんが、突然わたしの手首をつかんだ。
脇にあった扉にカードキーをかざし、奥の通路へと手をひかれる。
「来栖さん、どうしたんですか……っ」
来栖さんは答えず、足早に前へ進む。
普段は使われていない業者用通路のようで、シン、と冷たく静かだ。
来栖さんは途中のドアにまたカードキーを押しあて、私をドアの向こうへ押し込んだ。
「あっ、……来栖さん……?」
ドアが締まり、ピーとロックされた電子音が聞こえた。
部屋は狭く、暗い。倉庫か何かだろう。
「篠宮さん」
来栖さんの腕が伸び、わたしは壁へと追いやられた。
「篠宮さん、僕はね、君の企画を押し通すことができる」
「えっ」
来栖さんの顔は間近に迫っていた。
いつもの冷ややかな面持ちが、鬼気迫っているように見える。
「でも、あんなプレゼンじゃ……」
「プレゼンの内容はひどかった。しかし、企画はほぼライラックと同じだ。
僕の権限なら、エイチドットで押し通すことができる」
静かな室内に、わたしたちの息づかいだけが響いた。
(それって……)
「分かるかい?」
来栖さんが、わたしの目をまっすぐに見つめた。
セットされた前髪がはらりと額に落ちた。
(どうしよう、でも、今は彼氏もいないし……)
(いや、絶対に寝ないって決めたもの)
「来栖さっ」
断ろうと口を開いたとたん、来栖さんの唇がかぶさった。
壁に手首が押し付けられる。
倉庫の壁の冷たさだけが、ひんやりと背中に感じられた。
「ん、んっ」
舌が唇から割り込んできた。
顎をおさえられ、吸い付くように舌をからませる。
顎から手は胸元に降り、わたしのジャケットのボタンを外した。
「いや、来栖さん、やめて……っ」
唇が離れ、そう懇願したが彼は力づくでわたしのジャケットを脱がせ、自分のタイを外した。
「こうなることは分かっていたんだろう?」
端正な顔を崩さないまま、冷淡にそう言った。
「いつも僕を誘惑しようとしていたね?それに、乗ってあげようというだけさ」
「それは……っ」
また言葉を遮られるように、唇が重なった。
噛み付くような、荒々しいキスだ。