Secret Lovers
「いいじゃないですか、帰してあげましょうよ」

そう口を開いたのは周防奏多だった。
彼は入口の前から少しも動かず、何か本のようなものを読んでいた。

「お前は演技の感想聞きたいだけだろ。お前らは揃いも揃って俺の喫煙時間を……」

だらだらと文句を並べていた三田は、いいことを思いついたとばかりに立ち上がり、周防奏多に近づいてその肩を軽く叩いた。

「10分、よろしく」
「はい?」

ニヤッと笑う三田は、周防奏多が問いかけるより早く理科実験室から出ていってしまった。

“せ、生徒に自分の仕事おしつけたぁ!!?”

教師として間違っている、と抗議の声をあげたいところだが、当人は既にタバコ片手に外の喫煙スペースに向かっているのだろう。

「はぁ」
「はぁ」

思わずこぼれたため息が、周防奏多のそれと被り、私たちは思わず目を合わせてしまった。
その表情は少し困惑しているようで、すぐに視線を外すと、また別の方向を眺め始めた。
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