Secret Lovers
反省文を書く手が進まない。
書くべき言葉が浮かばず、これからどうしようという事ばかりが頭を占める。
早く帰りたい。
早く帰って、もっと冷静になって、ちゃんと考えたい。
周防奏多への復讐心はいまだにある。
やはり、優子を泣かせたことは許せない。
けど、勝機もないかもしれない。
それって、時間を費やす意味があるのだろうか。

“……弱気なんて、らしくないな”

文字を書いては消す。
頭の中と同じ。
浮かんだことをネガティブに否定する。
背中に感じる彼の存在が、ほんの少し私を焦らせる。

“はぁ、やだやだ!こんなの、全然楽しくない!”

まだ失敗してないじゃないか。
無理やり自分自身を鼓舞してみると、少しだけ心が軽くなった。

“よし!さっさと書いて帰っちゃお!!”

そう意気込んだときだった。
目の前の椅子が動き、そこへ周防奏多が腰かけたのだ。

「え、あの……」

“なんで、わざわざここに?”

他に席はたくさんあるのに、と、私は少し焦った。
その想いが伝わったのか、周防奏多は「一応、三田先生に頼まれたから」と、相変わらず手元の本に目を落としていた。
近くで見ると分かったのだけど、それは演劇の台本らしかった。

「それに」
「……?」

そこまで言って、周防奏多は言葉を詰まらせた。
反省文から再び視線を上げると、彼は台本で口元を隠し、だけど視線は外したまま、

「僕も、シマウマじゃないので。ライオンは、別に怖くない」
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