完璧上司は激甘主義!?
「天使?」

意味が分からない言葉に、スライドドアを閉めようとした手は完全に止まり、その体勢のまま上を見上げると、そこにはスーツ姿のビジネスマンがひとり、私を見てはなぜかニヤニヤしていた。

え……と誰だっけ?
こんな人、知り合いにいたっけ?少なくともブライダル企画課にもサロンにもいないと思うんだけど……。
それか大学時代の知り合い?
混乱しながらも必死に思い出してみるものの、どうしても名前が浮かんでこない。
そもそも顔も覚えていない。

もしかして人違い……とか?
だけどその割には、なぜかいまだに立ち止まったまま、じっと私を見つめている。
これは明らかに人違いってわけではなさそう……だよね?

そんなことを考えていると、なぜかその人は私と視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

「天使ちゃん、初めまして!俺、エタンスラント営業部の速見裕介!」

二カッと白い歯を覗かせる速見さんという人は、どこか憎めない印象を与えた。

「え……同じ会社の方、ですか?」

「そう!よろしくね!天使ちゃん!」

同じ会社の人と分かって納得いったものの、さっきからこの人はなぜ私のことを『天使ちゃん』などと呼んでいるのだろうか?
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