完璧上司は激甘主義!?
そんな思いを抱えたまま見つめていると、なぜかフッと視線を逸らされてしまった。

「いや……悪い、やっぱりなんでもない」

「――え?」

そう言うとすぐに立ち上がってしまい、ソファーのスプリングがギシっと音を立てた。

「送っていく」

背中を見せたままの南課長。

タクシーの中から南課長は私に話があると言っていた。
さっきだって話そうとしてくれたはず。……なのに、話してくれないのはなぜ?
私にとってマイナスな話だから?……私が傷つくような話なの?

「出る準備してくるから、ちょっと待っててくれ」

私を見ないまま、寝室へと向かおうとする南課長の背中を見た瞬間、咄嗟に立ち上がり呼び止めてしまった。

「待って下さい!」

私の声に足を止め、ゆっくりと振り返る南課長。

南課長は私に話すことがないとしても、私にはある。
そうだよ。今日は私、南課長に気持ちを伝えるためにきたんだ。

「私はあります!……南課長に話したいことが!」

散々期待しちゃったけれど、こうやって何事もなく送ってくれようとしてくれるってことは、やっぱり私は南課長にとって、いち部下でしかないのかもしれない。
でも私は違うから。
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