完璧上司は激甘主義!?
「……嘘でしょ」

玄関のドアが閉まる音がいつも以上に、大きく耳に響く。
茫然としながらも、頭に浮かぶのはさっきの南課長の言葉。

“教えてやる” “土曜の午後一時”

えっと……それってつまり、私に家事のノウハウを教えてくれるってこと?

「いやいやいや!女として終わっているでしょ!」

【家事を教えてくれる=女として見られていない】
ってことでしょ?

「なんでこんなことになっちゃったんだろう……」

もっと早く心を入れ替えて、部屋を綺麗な状態に保っていれば?
昨日田村さんと飲みに行っていなければ?
飲み過ぎなければ?
それを言ったら、斗真の言う通り田村さんを待っていなければ?
過程の話を言ったらキリがない。
つまり元を辿れば、全て自業自得。
もうきっと私は一生南課長にとって、恋愛対象になることはないよね。

「最悪……」

じんわりと涙が浮かんでくる。
こんな姿、南課長に見られたくなかった。
そうは言っても全て自分が悪い。
私は、自分で自分の恋愛を全てマイナス方向へと持っていってしまったんだ。

ズズッと鼻を啜りながら、フラフラとリビングへと戻っていく。
リビングのテーブルの上には、ひとり分の食器が置かれている。
ついさっきまでは食器がふたり分並んでいたのに――……。
一気に現実世界へと連れ戻された気分だ。
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